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各界の声

万博後の関西経済

正木 一博 氏

日本銀行 理事・大阪支店長

今年の大阪・関西にとっての最大の出来事は、何と言っても万博の開催でした。当初こそ、やや消極的な意見も見受けられましたが、後半にかけて来場者数も加速度的に増加し、大盛況のうちに幕を閉じました。来場者数が目標を上回っただけでなく、各種のアンケート調査をみても、来場者の満足度は極めて高く、万博がイベントとして大成功であったことは疑う余地がありません。関西国際空港においても、発着枠の増加やターミナルビルの改装により、利用客の受け入れ体制が万全であったことが、そうした成功を後押ししたものと考えられます。そのうえで、次のステップとして、万博のレガシーを大阪・関西経済のさらなる持続的な発展につなげていくことが大切だと考えます。
 関西経済の特徴をみると、第一に、輸出やインバウンド関連の大きさが指摘できます。関西(2府4県)の全国に占めるウエイトは、「人口」、「域内総生産」、「製造品出荷額」は、いずれも16%程度ですが、「輸出額」は2割程度、「インバウンド消費額」は3割程度に達しています。また、「インバウンド消費額」を輸出産業として捉えると、「半導体等電子部品」に続く第2位の産業となり、「鉄鋼」や「自動車」などを大きく上回ります。第二の特徴は、高度な科学技術が集積していることです。全国の産学共同研究の約25%が関西で実施されており、1件あたりの受入れ金額も全国平均を上回っています。京都大学・大阪大学・神戸大学・大阪公立大学等をはじめ、高度な研究・教育水準を誇る大学・研究機関も多く、大学発のスタートアップも盛んです。
 こうした特徴を踏まえると、関西経済をさらに発展させていくためには、インバウンド消費額の更なる増加を図っていくとともに、各分野における高度な技術を社会実装し、事業化していくことがカギになると考えます。この点、前者については、現在建設中の大阪IR(統合型リゾート)が果たす役割は非常に大きいとみています。世界標準のオールインワンMICE拠点を形成することは、大阪・関西の経済成長を牽引することはもとより、日本観光のゲートウェイとしても重要な機能を果たすものと思います。また、万博は、わが国の先端的な技術を紹介する場でもあり、実際、多くの企業や研究機関、金融機関等がパビリオンの展示や各種の企画に参画されました。ヘルスケアやスタートアップといった領域において、世界的な規模で見本市や交流イベントが開催され、内外の企業や投資家から注目を集めましたし、今後も様々なイベントが計画されています。万博を契機とした人と人とのつながりや、「産官学金」など広く関係者間で連携・協働していく仕組み──エコシステム──を拡充していくことが、イノベーションや新たなビジネスの創出にもつながっていくものと考えています。
 私事で恐縮ですが、私自身、大阪の出身で、大学進学のために上京するまで当地で過ごしました。今般、縁あって40年振りに地元・大阪に戻ってまいりました。「関西経済のプレゼンスの趨勢的な低下」を指摘される方も多いのですが、大阪・関西万博の大成功を目の当たりにし、様々な分野の方々のお話を伺う中で、東京に居る時には気づかなかった関西経済の持つポテンシャルの大きさを改めて認識しています。関西の持つ伝統とオープンさを活かしながら、イノベーションにあふれる、ユニークで魅力的な経済の発展を期待しています。日本銀行としても、各種の調査・分析や広報活動などを通じて、多少なりとも貢献出来ればと考えています。
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