齋藤 博之 氏
国土交通省 近畿地方整備局長

総務省の人口移動統計によれば、東京圏への転入が続く一方で大阪圏は統計開始以来、初めて転入超過となり、関西への期待が高まっています。
インバウンドの回復と、閉幕した大阪・関西万博がもたらした国際的な交流は、地域経済に新たな追い風となりました。さらに、阪神・淡路大震災から31年を迎える今、私たちは耐震化や初動体制の見直しを重ねて都市インフラの強靱化を進めてきました。
これから求められるのは、この「強靱さ」と万博が示した「持続可能性」を結び付け、空港と広域インフラを核として関西の成長を加速させることです。
(1)広域ネットワークの高度化による関西価値の最大化
関西国際空港・大阪国際空港・神戸空港の3空港は、アジアに近い地理的優位を生かすゲートウェイです。その力を最大限に発揮するには、空港を取り巻く高速道路・鉄道網、港湾、都市交通、さらには都市機能が一体的に機能することが不可欠です。
近畿には広域道路ネットワークの「ミッシングリンク」が残り、都市圏と地方圏を結ぶ高規格道路の未整備や、港湾と内陸物流拠点の接続不足がボトルネックとなっています。
阪神高速淀川左岸線や大阪湾岸道路西伸部は、災害時の緊急輸送を担保しつつ渋滞を緩和し、物流を高度化する要になります。京奈和自動車道は世界資産を結び、観光振興と防災の両面で地域価値を高めます。
淀川舟運の再生は、非常時の代替ルート確保と平時の回遊性向上に資する取組であり、船着場は水辺の玄関口として沿川の活性化を後押しします。港湾においては、阪神港の大型船対応やカーボンニュートラルポート形成を進め、国際物流の接続性を強化します。
(2)災害に強い、安全・安心な広域圏の構築
南海トラフ地震や激甚化する豪雨災害に備えるため、道路・河川・港湾などの基幹インフラの冗長性と耐災害性の強化が不可欠です。災害時に空港・港湾へ確実にアクセスできる多重ネットワークの整備を進めるとともに、阪神・淡路大震災時に舟運が応急復旧を支えた経験を踏まえ、陸海の複線的な連携を強化します。また、行政・企業・地域が平時から協働し、実効性のある減災・復旧体制の構築を図っていきます。
(3)インフラDXと担い手の確保・育成
人口減少と少子高齢化が急速に進む中、建設業就業者の担い手不足は構造的課題として深刻化しており、社会基盤を支える産業の持続性を脅かしています。こうした状況に対応するため、生産性向上は極めて重要です。
近畿地方整備局では、BIM/CIM、リモート監督・検査、ICT施工、プレキャスト工法やシステム型枠の活用、定置式水平ジブクレーンの導入などインフラDXを推進し、安全性・省人化・工期短縮を目指します。また、新3K(希望・給与・休暇)に「快適・きれい」を加え、魅力ある職場環境づくりを進めています。
さいごに
“Kansai Transformation” の理念のもと、関西3空港を最大限に活用するためには、国際性の強化と陸海の広域インフラネットワークの整備、そしてもちろん背後の関西のまちづくりとの連携が極めて重要です。関西は、日本の成長を牽引する地域へと発展することができると考えています。近畿地方整備局は、強靱さと持続可能性を両立させながら、関西の潜在力を確かな発展へと繋げるべく全力で取り組んで参ります。