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航空空港研究レポート

-学識者による研究レポート-

地域の主体的な努力は空港利用者の獲得につながるか

西藤 真一 氏

桃山学院大学

はじめに

 人口減少が加速するわが国の地方では、定住人口の維持はもはや困難であり、多くの自治体が交流人口や関係人口の拡大に地域の活路を見出そうとしている。地方空港の利用促進策においても観光を活用することは多い。
 国の政策としても地元の主体的な取り組みを期待している。たとえば「羽田空港発着枠政策コンテスト」はその代表例である。単に補助金をばら撒いて航空路線を維持するのではなく、地域と空港が一体となって地域の魅力を高めることによって、持続的に旅客流動を確保している。
 では、人口減少という厳しい環境下において、こうした地域(おもに自治体)の努力は、実際に空港利用者の獲得に結びついてきたのだろうか。筆者は2010年から2023年までの国内地方空港のデータを用い、地域経済や観光、そして自治体の観光施策が、空港の利用者拡大といかなる関係にあるのか検証を試みた。本小論ではその結果を速報的に紹介する。


地域の主体性に対する期待

 まず、これまでの空港利用者数の推移を確認する。国土交通省が公表する「空港管理状況調書」によれば、2024年の全空港の乗降客数はおよそ3億1,900万人であった。コロナ禍に見舞われる直前の2019年の利用者は約3億3,300万人であり、すでにコロナ禍前の水準までほぼ回復している。
 図1は全国の各空港利用者について、2010年を1とした場合の空港種別ごとの傾向を示している。なお、「3大都市圏」は成田・羽田・中部・関空・伊丹の5空港を指す。このグラフから分かるように、2010年以降、おおむねどの空港も旅客数は拡大傾向にあった。



 なかには山形空港のように旅客数を大きく伸ばした空港(2019年に2010年比で約2.3倍、2024年は同2.2倍)もある。他方で、富山空港のように苦戦しているように見える空港もある(2019年に2010年比の0.6倍、2024年は同年比0.4倍)。もちろん、山形空港では前述の「羽田空港発着枠政策コンテスト」により2014年春ダイヤから増便されたことが背景にあるし、富山空港では2015年3月の北陸新幹線の金沢延伸という背景がある。
 しかし、こうした外的な要因以外にも、地元の努力により空港利用者の拡大に繋げている空港もある。たとえば、佐賀空港は2010年におよそ34万人の利用に過ぎなかったが、2019年には約2.4倍(約81万人)、2024年には約1.8倍(約60万人)に伸ばした。この背景には佐賀県庁を中心とする積極的な利用促進の取り組みがあった(野田, 2021)。
 松本空港も2010年に6.6万人であった利用者を2019年には約2.4倍の約16万人、2024年には3.8倍の約25万人へと成長した。報道によれば、国内空港経由で訪問する外国人旅行者が目立ち、外国人宿泊者数が2014年以降でも3.5倍に増えているという(日本経済新聞, 2025年8月30日付 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91006040Z20C25A8EA1000/)。長野県ではアウトドアを観光活性化に向けた取り組みの核と位置付け、これが奏功している(令和7年度長野県観光振興アクションプラン)。
 先に、羽田空港発着枠政策コンテストは旅客増の「外的な要因」と整理したが、航空会社と地元自治体が共同で利活用促進策を提案し、その内容を提案者どうしで競い合う形で羽田発着枠の配分先を決定する意味で内実は佐賀や松本と共通する面がある。このように、近年は航空会社への陳情に頼るのではなく、地元地域が主体的に地方路線の充実、利用促進に努めている。
 確かに佐賀空港や松本空港などは報道でも取り上げられ、その努力は結果に結びついている。しかし、他の空港はどうだろうか。そうした努力は報道されないだけで、空港利用者の獲得に結びついているのだろうか。このことを確かめるため、筆者は分析を行なった。


地域の努力と旅客数・便数の関係

 分析で参考にしたのは、空港利用者の決定要因について調べた文献である(おもにAlbayrak, et.al., 2020, Liu, et.al., 2006, Valdes, 2015)。そこでは、概ね次のような変数が使われている。①経済力(一人あたりGDPなど)、②航空市場(路線数、航空会社数など)、③地理的要因(近隣空港の存在など)、④社会・観光要因(ホテルベッド数など)、⑤政策要因(オープンスカイなど)。
 これを参考に、筆者は大都市圏の7空港(成田・羽田・伊丹・関西・中部・新千歳・福岡)と離島を除くすべての地方空港を対象に、外国人宿泊者数のデータを取得できる2010年から、個人所得に関する最新のデータを入手できる2023年までのパネルデータを用いた分析を行った。なお、同一県内に複数空港を抱えている県もあるため、当分析ではできるだけ空港利用者の実態に近づけるべく、観光客指標をのぞいて市町村レベルでのデータを使用した。
 ここでは分析の概念を簡便に示すため、回帰分析の概念を用いた散布図を示す。このプロットは実数値ではなく、対数値に変換した上で各空港の規模(利用者数の大小)を取り除き、その空港が平均的な年と比べてどれだけ変化したかを抽出したものである。つまり、ある空港のその年の値がその空港の平均値を上回れば、正の値でプロットされる。なお、分析対象の期間にはコロナ禍(2020〜22年)が含まれているので、これは区別した。
 このグラフから以下の点を指摘できる。第1に、地元経済力(個人所得や企業の収益性)と利用者数は密接に関連している(図2・図3)。ここでは紙幅の関係で図を記載しないが、特に企業の収益性は「便数」との関係でも比較的明確な相関を確認できた。
 しかし、残念ながら個人所得は「便数」と有意な関係を見出すことはできなかった。地方では所得が増加すると旅行など移動需要を創出するものの、増便に至らしめるわけではない。他方、企業の収益性は旅客数だけでなく便数との関係でも有意な関係を持つ。つまり、地方では企業を中心とする地域経済の活性化が空港利用促進のベースになることが示唆される。
 第2に、外国人観光客数との相関が見られる(図4)。コロナ禍のときに観光は大きく落ち込んだため、プロットは平時よりも左下に分離されているが、総じて外国人観光客と旅客数は正の相関が見られる。現在、地方への分散誘客に向けた取り組みがなされているが、それは地方空港の利用拡大に資すると示唆される。
 第3に、地元の努力として「観光予算」も「旅客数」と関係があることを確認できた(図5)1)。コロナ禍において国は「Go Toトラベル」のような観光業を支援したが、同様に自治体も観光支援策を講じた。そのため、図のプロットとしてコロナ禍は全体的に右側にシフトしている。


注:「個人所得」は市町村民税の納税義務者1人あたり課税対象所得、「企業収益」は法人住民税(市町村税)の法人税割額を集計している。


注:「観光予算」は地方財政状況調査の「歳出内訳及び財源内訳」から「商工費:観光費」を集計した。


まとめ

 かねて自治体は産業誘致などを通して定住人口の拡大に取り組んできたが、歯止めがかからない人口減少を前に観光活性化(交流人口の拡大)や関係人口の拡大に取り組んでいる。筆者の行なった分析から、それらの取り組みは決して無駄ではないことがわかった。
特に、企業の収益性や飛行機を使う機会の多い外国人の宿泊者数は、旅客数ばかりか、便数とも明確な関連がある。つまり、それらの指標の増大は増便につながる可能性が高い。
 もちろん、個人所得は便数との関連までは確認できなかったが、筆者の手元にある分析結果では、旅客数はどの変数よりも大きな係数推定値となり、もっとも旅客数に影響を与える要因であることを確認している。つまり、観光で外から人を呼び込むことの重要性は失われるわけではないが、その地域に住む人の所得や産業振興に努めるといった、地域経済の強化こそが空港活性化の王道だということを忘れてはならない。


1)便数との関係など詳細については、別途、発表予定だが、筆者の分析では「便数」とも有意な関係があることを把握している。


参考文献

  • Albayrak, M.B.K., Özcan İ. Ç., Can, R. and Dobruszkes, F. (2020) “The Determinants of Air Passenger Traffic at Turkish Airports”, Journal of Air Transport Management, 86.
  • Liu, Zhi-Jun, Debbage, Keith Debbage, and Blackburn, Brendan (2006) ”Locational Determinants of Major U.S. Air Passenger Markets by Metropolitan Area” Journal of Air Transport Management, 12(6), 331-341.
  • Valdes, V. (2015)”Determinants of air travel demand in Middle Income Countries” Journal of Air Transport Management, 42, 75-84.
  • 野田信二(2021)「県庁職員100人の営業力:佐賀空港」, 関西空港調査会(監),加藤一誠・西藤真一・幕亮二・朝日亮太(編著)『航空・空港政策の展望-アフターコロナを見据えて』中央経済社, 第13章所収.
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