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今月のセミナー

-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-

万博イヤーにおけるインバウンド動向

渡会 浩紀 氏

株式会社日本政策投資銀行関西支店 企画調査課 課長

●と き 2026年6月17日(水)

●ところ オンライン会場

はじめに/目次

 日本政策投資銀行関西支店企画調査課の渡会と申します。今日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。我々の銀行は、全国に支店がファイナンスに加え、調査機能を有しているのですが、観光業は重要なテーマとして、多くの情報収集や情報発信をしております。私の所属するこの関西支店においてもしかりでございまして、その基盤となる我々独自のデータも収集しています。
 そのデータをご紹介しながら、本日は関西を中心としたインバウンド観光について考えてみます。
 お話しさせていただくテーマは4つ。一つ目と二つ目は、関西・せとうちエリアにフォーカスしています。この2地域をつなぐことで、インバウンドにとって高い付加価値を提供でき、かつお互いのエリアにとってWIN-WINになるだろうと考え、関西だけではなくせとうちエリアも含めたデータ観測を定期的に行っております。
 第1章では統計データのおさらいをします。第2章では、我々独自のデータなのですが、まだ日本に来ていない人も対象者に含めたアンケート調査を用いて、関西・せとうち旅行への意向に関するデータもご紹介させていただきます。
 第3章では、大阪を中心として、西がせとうちですが、東側の紀伊半島にも注目して、インバウンド動向について人流データを踏まえてトレンドを紹介したいと思います。

 第4章では、万博来場者にアンケートを取りまして、万博期間中のデータではありますが、「万博後にどのような変化が起きるか」についての参考になればと思い、情報をまとめております。

1. 関西・せとうちエリアを中心としたインバウンド市場の動向

 全国:インバウンド消費額

 まずは、関西・せとうちエリアを中心としたインバウンド市場の動向をご紹介します。こちらは全国のインバウンド消費額のデータです。
左側の円グラフが、昨年2025年の1年間の旅行消費額です。全体で37.6兆円、うち1/4がインバウンドの消費額で9.5兆円。
 右側の棒グラフは、製品別輸出額とインバウンド消費額の比較です。GDPの計算上、インバウンドが消費した額というのは、項目としては「輸出」に計上されますが、各産業の輸出と比べると、観光の9.5兆円は自動車産業に次ぐ規模であり、観光産業の重要性が増してきていることは、皆様もご承知の通りかと思います。

全国:訪日外客数の推移

 その消費額の「人数×単価」のうち、まず人数についてですが、全国のインバウンド数の推移を見ると、2025年の1年間で4,268万人まで急増したことが分かります。国籍では、韓国が昨年からもさらに増加して、引き続きトップの市場となっています。

 一方で、その上の中国は910万人です。コロナ前が959万人だったので、コロナ禍からの回復が少し遅れたことに加え、経済状況も引き続きあまりよくないこともあって、2019年の水準に届いてはいませんが増加してきました。しかし直近ではご存じの通り少しまた減っているか思います。
 その他の国籍については、おおむね増え続けている状況です。

全国:インバウンドの消費単価と為替レートの推移

 次にインバウンドの消費単価ですが、コロナ前は大体16万~18万円という水準でしたが、コロナ後にジャンプアップして、直近では22万~23万円程度となっています。しかしこれはもっぱら、オレンジ色で示した為替レートから分かるように、円安が大きな要因だったのかと思います。

 加えて、コロナ後のリベンジ消費など、多少物価が上がっていることも寄与していると思いますが、人数も増えて単価もジャンプアップしている状況は、インバウンド全体市場を伸ばすことに大きく寄与しています。

関西地域:宿泊者動向

 続いてエリア別の動向です。関西地域の宿泊者の動向について、2府4県別のグラフを載せています。直近では4,660万人で、過去最高を記録しています。ご案内のとおり、大阪と京都が9割を占めています。京都は増え続けていますが、昨年1年間については、大阪が2,500万人から2,400万人まで減少しています。万博期間中に日本人客が増加したことが、インバウンドの大阪での宿泊を下押しした要因の一つだったと思います。

 さらに国籍別で見たグラフです。一番右が2025年ですが、やはり関西は赤色系で示した東アジアの比率が6割を超えており、全国に比べても多めという構図になっています。そして下の大阪、兵庫、奈良、和歌山で、中国(左から2番目のピンク色)が約3割を占めています。一方で、京都は欧州(緑色)の比率が多いというのも特徴です。

 これも傾向としては、左が2019年で、コロナ禍の構図を見ると、大阪、兵庫、奈良、和歌山では中国がもっと多かったので、マクロ的にもそんなに増えていないというところもありますが、割合としてはアジアが減って、欧米豪が少し増えているという兆しが見えています。

中国地域:宿泊者動向

 中国エリアの県別の動向としては、広島県が327万人のうち212万人と半分以上を占めており、水準としては兵庫より多く、広島が中国地域全体を牽引しています。

 国籍別では、右の2025年をご覧いただくと分かるとおり、鳥取、島根、岡山、山口で赤色の東アジアが関西よりも多くなっています。岡山がそうですが、中国だけではなく台湾や香港が多くなっています。

 一方で広島県については、先ほどご覧いただいた京都以上に欧州の割合が多いと思いますが、こちらでも2019年に比べると、東アジアの全体の数字は、県別で少し違いますがやや減りつつ、広島中心に欧州の比率が増えているという方向になっています。

四国地域:宿泊者動向

 続いて四国エリアです。ここも全体的には増えており、200万人を超えましたが、香川と愛媛が引っ張っています。これは特に直近で増加幅が大きくなっていますが、上の囲みでご案内の通り、松山空港と高松空港の増便が大きく寄与しています。

 同様に国籍でみると、四国はさらに東アジアが多くなって、8割以上が東アジアからです。愛媛に特徴的なのですが、韓国人の増加は空港の増便が大きく寄与していると思います。

国際定期便就航便数比較

 こちらは国際定期便の就航便数です。ご参加の皆様にとっては釈迦に説法ですが、関西空港をはじめとして、おおむね各空港で2019年の水準は回復もしくは超えている状況です。特に関西空港でアジア便を中心として増加しており、先述の高松空港、松山空港では韓国便が大きく増加しています。このように間口が広がったことが、インバウンド数の増加にもつながっているのだと思います。

 一方で、下の方に緑色で示した欧米豪については、羽田空港が153便から350便に大きく増加しているのが分かります。
 このようなトレンドの中、次の2章では関西・せとうち旅行に対する、まだ日本に来ていない人も含めたインバウンドの意向について解説いたします。

2. 関西・せとうち旅行に対するインバウンドの意向

 アンケート調査概要

 ここでは関西・せとうち旅行に対するインバウンドの意向について問うアンケート調査の概要を記載しています。

 調査対象者は年齢や性別である程度の数を確保できており、インターネット上で7,400人程度から回答をいただいています。

アンケート回答者属性(訪問希望者)

 回答者の属性はこちらのこの円グラフをご覧ください。全体と関西・せとうちでそう大きな変化はありませんが、第1章でご紹介した実績より、緑色の欧米豪、青色の東南アジアあたりが少し多くなっていることを前提として見ていただければと思います。

体験したいこと

 「日本に来て体験したいこと」という質問に対する回答です。アジアの人々の場合、全国でも関西・せとうちでも、「自然や風景の見物」をしたいという回答が、やはり日本らしさを感じるというところで1位に挙がってきています。

 第2位の「桜の鑑賞」も全国と関西・せとうちエリアで同じです。第3位では「伝統的日本料理」があがってきており、自然と食への関心が高いことが分かります。
 これは基本的に欧米豪でも似た結果です。例えば中国エリアでは第2位、関西エリアでは第3位になっていますが、「日本庭園の見物」もあがってきています。加えて四国エリアでは1位に「有名な史跡や歴史的な建築物の見学」がきており、欧米豪では庭園と歴史への関心が高いので、このようなコンテンツがうけているのだと思います。
 これは日中の体験ですが、夜間に何を体験したいかについても聞いています。

 我々の選択肢の設定の仕方にもよりますが、アジアにおいては全国同様、関西・せとうちエリアでは「ストリートフード/ナイトマーケット食べ歩き」が1位にあがってきております。関西エリアではショッピングする場所が多いこともあり、2位にショッピングがあがってきています。
 欧米豪では、「食べ歩き」か「伝統的な料亭」が関西・中国エリアであがってきています。やはりアジア人とは少し違い、「カフェやレストラン」「バーやパブ」が多くあがっています。このあたりがあるとインバウンドの宿泊に対する満足度がアップするということで、古民家を改修してバーにするなどの事例もよく見られるのだと思います。そのような取り組みがインバウンドの宿泊や周遊につながっていると考えられます。

体験活動への追加支払い意向

 宿泊すれば、それだけその地域に落ちるお金が増えるわけですが、「いろいろな体験活動に対して、どれだけ追加で支払えますか」という質問もしています。アジアも欧米豪も、真ん中のピンクが示す「通常料金より20%高くても、日本ならではの特別で質の高い体験をしたい」が多数を占めています。それだけ値上げの余地もあり、そういった値段設定もできるのかなと思いました。

 冒頭で、平均的な消費単価が22~23万円程度と申し上げましたが、これはモノやサービスによるところもあると思います。インバウンドはこのようなコンテンツであれば、やはりまだまだお金は支払えるということです。
 程度については、「50%以上高くても支払う」という割合はかなり低くなるので、20%以上50%未満ならば値上げも検討できるのではないでしょうか。

地方訪問①訪問経験・訪問意向

 次に、地方への訪問経験についても聞いております。ここで地方というのは都市部以外と定義しています。アジアも欧米豪も9割が「地方を訪問したい」「地方に行けば日本ならではの体験ができるだろう」と思っています。

 一方で、日中はそうなのですが、特に欧米豪は、なかなか欲張りではありますが夜間にバーやパブも欲しいとのことです。

地方訪問②訪問理由

 地方を訪問する理由は、「自然景観の鑑賞」もしくは「その土地の郷土料理や地元食材使用の飲食店への訪問」が多く、このあたりを味わったり体験したりすることを魅力に感じているようです。

 アジアで3位のところに「宿泊や飲食などのコストパフォーマンス」がきていますが、地方のほうが宿泊代や飲食代のコストパフォーマンスがよく、ある程度経済的だというインセンティブもあるようです。
 一方で欧米豪を見るとそうではなく、地方で郷土料理や歴史を体験したいという意向が強く出ています。このあたりは先ほどの追加支払いを含めても、こうしたより良いコンテンツを提供して、さらに適正な価格付けをする余地がある状態にあるのだと思います。

地方訪問③体験したいこと

 訪問理由とほぼ一緒なのですが、「地方で体験したいこと」を聞くと、アジアの方々は「その土地の郷土料理を食べる」や「自然観光地を訪れる」「温泉を楽しむ」があがってきています。

 欧米豪では、郷土料理も上位にありますが、やはり「歴史的な建造物や遺跡を訪れる」体験をしたいという回答も多く、そちらへの関心が高いことが見てとれます。

滞在日数

 こちらは滞在日数のボリュームゾーンをとらえたくて取ったデータです。アジア人では、関西の一番のボリュームゾーンは薄いピンク色で示した「4~6日間」で、より足を伸ばして中国エリアや四国エリアへ行く方々は、アジア人でも「7~13日間」がボリュームゾーンに近づいています。

 欧米豪については、上の囲みでもご案内のとおりより長い滞在となるので、関西でも「7~から13日間」が一番のボリュームゾーンになっています。そして、青色で示した部分を見ると分かるように、1カ月近く滞在している中で、関西・せとうちエリアに訪れる人も多くなっています。
 従って、長期滞在における広域周遊の中の一つだととらえた戦略も求められるのかもしれません。

希望する旅行形態(訪日旅行希望者)

 旅行形態、つまりどう旅行をセッティングするかについて、訪日旅行希望者にアンケートを取りました。赤色がパック旅行、黄色はいわゆるセミパッケージを示しており、例えば関西エリアでは、ある程度パッケージ化したもので組みたいという意向が見られます。訪日経験がない方々によりその傾向が出るのは納得の結果だと思います。

 そして訪日回数が多くなるほど、グラフ右側の水色が示す「航空券なり宿泊施設を個別に手配」したい人が増えていきます。例えば中国エリアに少し足を伸ばすことになると、訪日リピーターは個別手配がやや多くなっていることが分かります。
 個別に手配する人が多いという結果を見ると、やはり足を伸ばしてもらうためには着地型の旅行商品の造成が必要なのだろうと思います。

実際の旅行形態(訪日旅行経験者)

 こちらは先ほどの「訪日希望者」とは違い、実際の「訪日旅行経験者」に聞いたアンケートです。

 水色の個別手配の割合がかなり増えており、「パッケージで組みたいが、希望するツアー商品がない」というギャップもあるのでしょうが、これは逆に考えると、組み方でまたニーズを満たすことができるのではないかと思います。

認知度

 各観光地の認知度を聞きました。例えば京都が47%、大阪が50%ですが、これを見てどうお感じになられるでしょうか。京都や大阪という地名は半分ぐらいが知っていることになります。広島だと34%、岡山は12%、松山になると10%を切っています。

 詳細は各自でまた見ていただければと思いますが、アジア、欧米豪など各地で分けるとまた少し違いますし、国籍別でも違ってきます。

訪問意欲

 続いて訪問意欲について。例えば京都では30%になっていますが、認知度が47%なので、知ってはいるが、さらに行きたい人となると、どの地域もこの数字は小さくなるという結果になっています。

認知度と訪問意欲の関係性

 この認知度と訪問意欲を縦軸と横軸にプロットしてみました。当然ながら、おおむね「知ると行きたくなる」といった関係性があるということです。

 しかし左下の四角で囲んだ部分は「知ってはいるが、行ってみたいと思った人が少ない」観光地で、広島、横浜、長崎、福島といった、戦争や地震の印象で地名は知っているけれども、観光地として行きたい人がやや少ないエリアもあるかと思います。
 いずれにせよ、左下では、行ってみたい観光地だが認知度はこの中では低めのものを示していますが、より認知度を上げていくフェーズの地域で、そのための策が必要だろうということを書いております。

訪問経験

 このような中で、訪問を経験したエリアも聞いております。この場合、京都、大阪が4割程度、広島になると7%ぐらいという結果です。

 緑色で示した欧米豪のところでは、「行ってみた」割合でいうと、奈良県は12.3%なのですが、大阪からアクセスがいいので、日中に奈良市、奈良公園に行く人も多くなり、意外と訪問経験が高くなっています。
 奈良を含む紀伊半島にも着目したのが第3章です。

3. 紀伊半島におけるインバウンド動向

 紀伊半島観光の現状

 冒頭申し上げたとおり、大阪を中心として、西はせとうちエリア、東は紀伊半島のインバウンド観光地づくりを考えてみたいと思い、データをまとめてみました。

 観光庁の「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」のモデル観光地に紀伊山地や伊勢志摩が設定され、アクションプランも作成されているところです。
 現状としては、国内客が8~9割を占めており、インバウンドについては課題が多い地域だと思います。

<インバウンド>訪問者数・延べ宿泊者数

 インバウンドのデータに絞ってお話しします。スライド左側が訪問者数と延べ宿泊者数ですが、先ほど触れました奈良公園に行く方々は日帰りで帰るので、奈良県で泊まる人は10%にとどまっています。

 一方で和歌山県については、1人当たり1.8泊と高くなっており、3県で結構違う特色が見られます。

<インバウンド>紀伊半島13市町村と近辺主要駅における訪問者数

 上記のことをもっとつぶさに見たいと思い、人流データを確認してみました。これは主要な13市町村をピックアップして、そこへの滞在人数をプロットしたものですが、やはり奈良市が190万人で圧倒的です。

 青色と黄色の訪問者数が逆になっており申し訳ないのですが、和歌山が19.5万人、白浜町が14.4万人と続いた後は、ブルーの地域(10万人未満)は3万人以下のところもあり、紀伊半島内で集客数の地域差が大きいことが分かります。

<インバウンド>奈良県・和歌山県・三重県の市町村別・月別訪問者数

 月別の訪問者数を見てみると、これも少しバラバラでして、奈良県全体では4月が一番多く、3月・4月・10月がハイシーズンとなります。その中でも特に吉野は、桜を目指して来る人が多いため、4月にピークが集中します。

 一方で和歌山県は8月に、白浜などを中心に海を1つのコンテンツとしてピークが来ています。三重県については3月が多くなっており、こちらも来ている方々の違いやコンテンツの違いで月による繁閑はバラバラです。
 一方、これらをつなげることによって、紀伊半島全体で見たときの繁閑を均すことが、特に宿泊事業者にとっては肝なのではないかと思います。

<インバウンド>国籍割合

 国籍で見るとまたそれぞれに特徴があります。赤系で示した東アジアの割合が、先ほどご紹介したとおり、紀伊半島の3県においても、60%を超える状況です。

 しかし各県で、奈良では十津川村、和歌山では高野町、三重県では熊野市、これらは緑色の欧米豪の割合が多くなっています。紀伊半島の真ん中にある熊野古道、高野山が、フランス人などを中心に欧米豪から人気となり、このような点が肝となって、訪問者が増える効果が現れる市町村もあるという構図になっています。

<インバウンド>出入国空港

 来る人は違いますので、ここはまた皆様もご存じのとおり出入国の空港も異なります。例えば奈良市を訪れる人で関西空港を使うのは70%を超えていますが、十津川村を訪れる人は欧米豪が多いこともあり、東京の成田や羽田を使っている割合が高いわけです。和歌山でいうと高野町も同様です。

 入国と出国ではそこまで差はありませんが、やはり国籍によって使われる空港はばらつきがあるのが現状です。

<インバウンド>時間帯別滞在人数

 時間帯別の滞在人数の割合もご覧ください。右側のグラフを見ると、おおむね昼間(ピンク色)に滞在している割合が多いことが分かります。特に吉野の桜を見に来るにあたっては、54%が昼に来ています。

 一方十津川村については、一番のボリュームゾーンが夜(水色)になっています。ここはフランス人に人気があり、移住者がツリーハウスを運営するなど、宿泊業を営んでいるのがうけているようです。そのような宿泊施設の整備やヨーロッパ人へのPR・訴求による効果が現れているところもあるということです。
 他のエリアにおいても、そのような施策によって滞在人口が変わることで、宿泊が生まれ消費額が上がることもあるのではないかと思います。

<インバウンド>奈良市・和歌山市・伊勢市訪問者の前後訪問府県と周遊傾向

 周遊動向も含め、訪問者の各県の特徴を見てみます。それぞれ、奈良市訪問者の前後の訪問先、岡山市訪問者の前後の訪問先、伊勢市訪問者の前後の訪問先を調べたデータです。

 これもまた奈良市においては、関西圏だけではなく、東西広範囲に分布しています(広域周遊型)。この場合、大阪に来た人で、例えばゴールデンルート上にいる人が奈良市に寄るというケースが多いのだろうと思います。大阪と東京を訪問している割合が70%を超えており、一方で奈良県内を周遊していたり、紀伊半島内で和歌山を訪問していたりする割合は、0.2%とかなり少ない。従って「ゴールデンルート+奈良市」というルートを周遊している人が多いのが奈良の特徴でしょう。
 和歌山市の場合はかなり関西圏中心で、90%以上が前後に関西圏を訪問しています。ここは近距離滞在型かつ、先ほどのデータのとおり、和歌山に泊まっているインバウンドが多いのだと思います。県内の周遊率も18%と高い割合です。
 和歌山に滞在した上で奈良も訪問している割合は3.5%で、これは奈良市よりは少し多いのですが、より接続もあっていいのではないかと思います。
 伊勢市については、ここもまた範囲が変わってきます。伊勢市と関東・東海エリア間を周遊している割合が高く、沿岸周遊型となっており、違った周遊動向です。三重県内を回っている人も23%います。
 それぞれで、そもそも来ている人たちが違うところが現れていると思いますが、先ほど時間帯でつなげていく可能性にも言及したように、これらを東西につなげていくインパクトもあるのではないかと考えております。

4. 万博来場者アンケートにみる今後のトレンド

 アンケート調査概要

 ここまで関西・せとうち、関東エリアの周遊動向の現状を見てきましたが、万博を経て何か変化があり得るのでしょうか。今後IR、夢洲2期と開発されていきますが、夢洲を起点としてどのような周遊になるのか、もしくはどのように国籍などの属性が変わっていくのでしょうか。

 万博期間中のデータをアンケート調査で取得しました。
 アンケート調査を実施したのはJR桜島駅で、2025年6月と9月、万博期間の前半と後半に分けて外国人に声をかけました。そして何とか600人近くのインバウンドからデータを取りました。

国籍割合

 少し細かくて恐縮ですが、国籍の割合を示しています。表の「万博来場者調査」というのが本件で取れたデータであり、その下の「インバウンド消費動向調査」で示されている普段の構図とどう変わっているかを比較しました。

 こう見ると、中国、台湾は割合としては大きく変わっていませんが、欧州、北米、豪では変化があり、特にドイツが4.2%と、普段の1%と比べて大幅にアップしていたり、米国も普段8~9%だったのが15%に伸びたりしていました。かつ「その他」でも普段5%ぐらいだったのが15%に上がっているので、欧米豪なり多国籍の人がいつもより多数来たといえます。

出入国空港

 出入国空港については、万博会場を目指す人が多かったため、約65%が関西空港を使用しており、普段の東京と比べて構図が逆転しています。

訪日目的

 万博を目指して来ている人も多かったので、万博が主目的だったのか、もしくは観光を主目的として来て、万博はそのついでだったのか、いずれなのかをとらえたいと考え、日本への訪問目的を聞きました。その結果、一番左の「大阪・関西万博」が41%で、業務で万博に来た方も少数おられ、そして「観光・レジャー」を主目的として来た方も41%でした。

 つまり、万博が「主」だった人と万博が「副」だった人の割合は半々ぐらいだったということです。万博か、観光が主の目的なので、「その他ビジネス」「留学」などの割合は少なくなっています。

体験内容

 このような方々に「日本滞在中にしたこと・これからすること」という体験に関する質問をしたところ、第2章で紹介したように「日本食を食べること」「ショッピング」「自然・景勝地観光」「繁華街の街歩き」などを挙げる方々が万博来場者調査でも多く見られました。

 このあたりは割合的に普段と変わりませんが、青色の棒線が少し出ているところでいうと「テーマパーク」があります。「ユニバ(USJ)」です。万博とユニバをセットで体験されていた人が多かったということなので、今後夢洲にカジノなりIRなり機能が付いてきた時に、体験したいことが普段とはまた変わっていくことが予想されます。

滞在泊数・支出額

 滞在泊数や支出額については、少しずつ伸びています。万博来場者調査の全体では、平均が11.5泊で、普段のインバウンドの消費動向調査に比べると少しだけ伸びています。

 総支出額については、滞在日数の伸びもあり、国籍の変化もあると思いますが、万博に来た人の平均は36万円でした。先ほど少しご紹介した通り、20万円前後が普段の数字なので、ずいぶん上がっています。
 単価が高いのはやはり欧州、そして一部サンプルは少ないものの中東も高い金額になっており、このあたりの国籍が引っ張っています。加えて万博という特別な体験によって各国で、アジア人においても、支出額が増えていたという結果になっています。
 日あたりの平均支出額が一番下ですが、これが2万円程度から3万4,000~5,000円あたりにジャンプアップしていたことも、必ずしもIRに関連するデータといえるわけではありませんが、強力なコンテンツが夢洲に出てきた場合は、滞在日数や支出額を増加させる要因になるかもしれません。

府内・国内訪問地

 波及効果を調べたのが次のデータで、大阪府内と国内の訪問地について聞いてみました。左側の大阪府内についてはやはり「道頓堀」「ユニバ」「大阪城」「日本橋(にっぽんばし)」があがってきています。

 国籍は色分けで示しています。割と幅広い方々が府内を訪れており、ここも普段の統計データとそこまで変わらないような府内周遊地になっています。ただ一方で、この中身はご紹介した通り、国籍なり支出額のその裏で、年収が高い人が来ていることが寄与しているので、万博期間中でこのあたりの訪問時にプラスの効果があったのかなと思います。
 「梅田スカイビル」は欧州(黄色)の割合が高いですが、日本らしいというか、あの建物の特殊な構造に興味があるヨーロッパ人が多いという話も聞いております。
 右側が大阪以外の日本国内訪問地です。関西は府県別に見て、その他はエリアごとでデータを取っておりますが、やはり一番は京都で半分以上が訪れており、続いてグレーター東京(関東)が2位、次に奈良県で23.8%、多くが大阪から訪れているということです。宿泊になかなかつながっていないという話も聞いてはおりますが、少なくとも人流はそこで生じていると思います。
 それ以外は10%未満になっていますが、万博があったから来たという人もいましたので、プラスの効果があったのかなとも思いますが、各エリアの自治体や民間企業からは、あまり万博の効果を肌身で感じることはなかったという声も聞いてはおります。
 各エリアで万博へ向けた観光誘致策を取っていた自治体や民間企業と、とっていなかった方々がおられましたので、今後は大阪から周遊を促す側としてアピールしていくと違いがあるのかなと思っています。

大阪府内訪問地の分布

 夢洲を起点として、周遊動向のどこにどう変化があるのか。先ほどご紹介したデータのうち、訪問先で関連性の強い場所同士を結びつけて、どう回っていくのかを可視化しようとチャレンジしたものを最後にご紹介します。

<大阪・関西万博を主な目的とせずに訪日した回答者>

 万博が主目的ではなく、まず日本旅行に来たという方々は、大阪府内では緑色で示したような南北の移動もしています。

<大阪・関西万博を主な目的として訪日した回答者>

 しかし万博を主目的として来た人、特にアジア人などは万博を体験して、少し東へ足を伸ばしてから帰るという人も多かったのですが、少し周遊の幅が減っています。

国内訪問地の分布
<大阪・関西万博を主な目的とせずに訪日した回答者>

 大阪府内においては、万博が主目的ではなかった方々のほうが移動が多かった一方で、全国について見ると、万博を主目的としなかった方々は逆に、「日本旅行はこういうものだ」という意識や知識があって、京都・奈良・関東といった定番の組み合わせで観光している人が多く見られました。

<大阪・関西万博を主な目的として訪日した回答者>

 万博を主目的として来た方々は、割と広域に周遊しています。夢洲にIRをはじめ、2期を含めた有力なコンテンツが生まれるとして、そこを主目的としてくる方々は、少し予想と違って、意外と広範囲に向かっていく動きがあるかもしれません。

 カジノをして帰ってしまう方もかなりいるのかなと思いつつ、旅行していく人がいればその波及効果が関西発であるかもしれず、これを前提とした戦略も必要ではないでしょうか。そして我々の調査がそのための参考の一つになればと思っております。

ディスクレーマー・問い合わせ先

 今回、いろいろなデータをご紹介させていただきましたが、何かお問い合わせがありましたら、こちらに示したお問い合わせ先にアクセスいただければと思います。
 時間がまいりましたので、私からは、以上といたします。ご清聴ありがとうございます。

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