木戸 貴文 氏
阪神国際港湾株式会社 代表取締役社長
当社は2014年に神戸港・大阪港のコンテナターミナル等を運営する港湾運営会社として、国、大阪市、神戸市等の出資を受けて設立された株式会社です。これまで私どもの様々な取組において、関係者の皆様方に多大なご支援、ご協力頂きまして厚く御礼申し上げます。
さて、日本の港湾を取り巻く海運情勢は、世界各地の地政学的問題、米国関税問題等、非常に厳しい状況の中、阪神港の国際基幹航路の維持・拡大を図るため、国際コンテナ戦略港湾の「創貨」、「集貨」、「競争力強化」の施策を推進してきました。
特に、阪神港に国際基幹航路を寄港させているメガキャリアは、主要航路に投入する既存船の大型化と共に環境に配慮した船舶へのリプレイス計画を進めています。大型船の入港対応はもちろんのこと、大型化に伴う新たなスペースを阪神港の貨物で埋めるため、集貨施策に的確に対応していくことが重要です。
ここで国際基幹航路が日本に寄港しなくなれば、どのような事態になるのか、我々の身近な生活の例でご紹介させて頂きます。
スーパーの店頭に冷蔵・冷凍豚肉が並んでいるのをよく日常の風景として見ることができますが、国内の冷蔵・冷凍豚肉の消費量は約200万トンで、その内、冷蔵豚肉が約2割の約40万トンとなっており、このほとんどがアメリカ・カナダから輸入されています。一般的に冷凍豚肉よりも美味しいと言われる冷蔵豚肉の賞味期限は55日程度で厳格に管理されていますが、アメリカ・カナダで精肉され、そこから阪神港までの母船直航サービスを利用して、店頭に並ぶまでに35日程度を要し、賞味期限まで20日程度の余裕しかありません。これがもし近隣他国の港経由となると、更に7~10日かかるので、冷蔵豚肉を使った料理が我々の食卓に上ることは難しくなると思われます。
国際基幹航路の母船による直航サービスがなくなり、我が国の輸出入が他国の港を経由するルートへ変わってしまえば、我が国の経済安全保障上も深刻な問題となります。
ところで、今年4月に大阪・関西万博が開幕しました。国内だけでなく、関西国際空港経由により多くの訪日客も万博を訪れています。開幕前に懸念されておりました、会場周辺での港湾物流車両に伴う交通渋滞につきましては、関係者の皆様の万全の準備と対策により円滑な交通が確保されておりますこと、感謝申し上げます。閉幕まであと1ヶ月となりましたが、ご安全に盛況裡に閉幕を迎えますよう祈念致します。
最後に、昨年、創立10周年を迎えた当社では、社員一同が何事にもチャレンジしていくファーストペンギンの精神を込めた、マスコットキャラクター「ブレイリー」を製作しました。この「ブレイリー」の思いを胸に、関西圏や広く西日本全体の経済を支えるため、また一方で、阪神港を含めた我が国の国際コンテナ戦略港湾が直面する危機的な状況を打開するため、スピード感を持って関係者をリードし、今後も港湾運営会社としての使命を果たして参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。