-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-
遠藤 由梨 氏
国土交通省道路局企画課 道路経済調査室 企画専門官
●と き 2026年2月20日(金)
●ところ オンライン会場
自動物流道路についてご説明の機会をいただきましてありがとうございます。本日は、なぜ道路局で自動物流道路の検討を始めたのか、そして現在の検討状況についてお話しさせていただきます。
まず、道路局においてなぜ自動物流道路の検討を始めたのか、という経緯のご説明にあたり社会経済に対する現状認識からお話しいたします。ご承知のところだと思いますが、世界的な経済トレンドを見ていくと、経済成長著しいインドや中国と比較して、日本の成長見込みは2000年以降の50年間で約1.3倍と、相対的な国際的経済地位が低下してきていると言えます。
さらに総人口でも、2010年を境にどんどん減少傾向にあり、2050年には人口の約4割が65歳以上になる見通しです。
日本の国土は、南北に細長く山脈が中央を貫いている特性から、災害が頻発するような国土状況にあります。また世界平均の2倍の降雨量が雨季や台風期に集中しています。資料右側の円グラフは、世界の地震発生数のうち約2割が日本で発生している状況を示しており、極めて自然災害に脆弱な国土であることがお分かりいただけるかと思います。
そういう中で、物流についても少しお話したいと思います。物流に関する最近のトレンドとして、宅配便の取扱個数が急激に増加してきている現状があります。グラフ一番左の1990年度には11億個だった宅配便取扱個数が、2000年度には25.7億個、2022年度には50億個に達し、この30年間で約5倍に成長しています。
この背景として、皆様も心当たりがあると思うのですがECサイトなどでスマートフォンから荷物を注文すると、翌日には家に運ばれてくると思いますが、このようにEC市場が拡大してきているわけです。市場規模の内訳を見ると、食料品、生活家電、衣服がよく購入されています。
ここで国内の貨物の状況をご覧ください。国内貨物のモード別輸送量については、トン(t)ベースで約9割が自動車で運ばれています。先ほど宅配便の個数が50億個ぐらいに増えてきていると話しましたが、そこで問題になるのが、貨物件数自体は多いが1個あたりの物流量が非常に小さくなってきていることです。1件あたり貨物量がこの30年で約3分の1になっている一方で、件数は2倍になっており、小口・多頻度化が進行しています。
トラックの積載量を見ると、だいたい35%前後で推移しており、貨物輸送件数が非常に増えている割に効率化が進展していないのが現状だと言えます。
次に、トラックドライバーの働き方の現状について。物流業界で最も大きな課題として、将来の担い手不足が挙げられると思います。今のドライバーの働き方をご覧ください。全産業が青色、オレンジがトラックドライバーの現状を示していますが、年間の労働時間は全産業より約2割長く、年間所得額は約1割低い。そして有効求人倍率は全産業の約2倍で、他の産業より労働条件が悪い中で人手不足が進行してきていることがお分かりいただけると思います。
その他物流における課題として、モーダルシフトがなかなか進まないこと、標準化の問題、荷待ち・荷役における非効率性が常々言われてきています。
モーダルシフト推進という観点で、「なぜトラックで運ぶことを選ぶのか」という点を聞いたアンケート(資料左側)をご覧ください。やはり輸送コストの低さ、到着時間の正確さ、所要時間の短さなどの点から、他の輸送モードと比較してよりトラックが選ばれていることが分かります。
標準化についても少しお話しさせていただきます。荷主様に合わせていろいろな荷姿やパレットサイズがある中で、例えば航空貨物でもいろいろな形があるのですが、標準化が進まないとなかなか自動化や電動化も進めにくいので、標準化された荷姿・パレットに乗せて運べるようにしていこうというのが課題になっています。
モーダルシフトに関する話題として、トラックから輸送の転換先として有望なのは鉄道貨物だと言われますが、いくつか課題があります。自然災害に弱く、そのたびにネットワークが寸断されてしまうこと。また、鉄道貨物は好きなところで荷物を下ろせるわけではなく、災害時に例えば他の駅に停車したとしても、フォークリフトがなくて下ろせないといった課題もあり、やはりトラックの信頼性の高さが評価されています。
トラックドライバーの働き方改革に関し、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されたことによって、荷物が運べなくなるのではないかと言われた「2024年問題」が発生したことは、記憶に新しいと思います。
「2024年問題」が起こる前年あたりに言われていたのは、何も対策を行わないと2024年度には輸送能力が約14%不足し、その後もさらに何も対策を行わないと、2030年度には約34%不足するというものです。今のように荷物を運べなくなるのではないかという、物流危機が昨年、一昨年ぐらいから強く意識されてきました。
ドライバーの高齢化や担い手不足が急速に進んでいる物流分野は、さまざまな構造的課題に対応する必要があります。
企業のほうでもドライバー不足は認識しており、左下グラフを見るとオレンジの「やや不足」「不足」していると感じる企業の割合は一定程度ずっとあり、やはり不足感が相当感じられている状況です。
右下グラフでは運転従事者数の推移を示しています。ここ20年間で約21万人従事者が減少してきており、今後15年でさらにそれを上回る約25万人が減少してしまうと見込まれています。
少し切り口を変えて、環境のお話になりますが、物流分野におけるカーボンニュートラルへの課題としまして、運輸部門からのCO2排出量は現在約1億8,000万tで、日本全体の排出量の約2割を占めており、サービス部門、産業部門に次ぐ排出量です。
これまでの最大排出量がこの真ん中の2001年、約2.6億万tです。その当時と比較すれば3割ぐらい減ってきてはいると言えるのですが、2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、運輸部門において2013年度比であと35%削減しなければなりません。量に換算すると約3,000万tの削減努力がこれから必要となります。
これまで我が国の社会経済、国土状況、物流、環境面の様々な社会課題について触れてきました。急速に進む人口減少、経済の停滞、少子高齢化など、日本が置かれた厳しい条件下において、我が国が経済成長を取り戻して、安全で活力ある国土を形成するために、道路分野からのアプローチとして、既存道路を適切に管理していくとともに、先進的な政策展開により新しい課題に対応しようという試みとして、道路局では「WISENET(ワイズネット)2050」を掲げています。
これは2050年に向けて「賢いインフラ」をつくっていこうと、3年ほど前から取り組んでいるものです。重要な方針として「シームレスネットワークの構築」「技術創造による多機能空間への進化」という二つの取り組み方針を掲げています。自動物流道路の検討は、この「道路空間の多機能化」という施策の一つとして今展開されてきているというわけです。
簡単に申し上げると、いろいろな社会課題に対応するために、道路の持つリソースをフル活用して何かできないか、というところから始まったのが自動物流道路の検討です。
我々が自動物流道路の検討にあたって参考にしている事例があります。海外において、CO2の削減や将来的な物流需要の増加に対応するために、新しい物流形態を検討している国があります。それがスイスの事例とイギリスの事例です。
どちらにも共通しているのは、人が荷物を運ぶという概念から、人の荷物を管理して荷物そのものが自動で輸送される仕組みに転換していこうという動きであると我々はとらえています。
まずスイスの事例を簡単にご説明しますが、こちらはCSTという民間企業が、スイスの主要都市間500㎞を地下のトンネルでつなぎ、自律走行するカートを3レーンで走行させて荷物を運ぶ計画が立てられていました。
CST社は民間企業で、基本的には小売メーカーが出資しており、スイスで今後も物流事業が増えていく中で、自分たちの輸送をいかに支えるか考えたときに、このように地下で荷物を運ぶ検討が始まったと聞いています。
これは元々カートの形で検討していたということですが、現段階ではケーブルカーで運んだ方が効率的だとのことで、検討状況や計画も変わってきているようです。
続いてイギリスの事例ですが、こちらはMAGWAYという会社が、鉄道の脇にリニアモーターを設置し、小包程度の大きさの荷物を自動運転で運ぶ計画をしていました。しかし同事業は事業清算した状態で、今は止まってしまっている状態と聞いています。
スイスの事例の詳細は資料をご参照ください。スイスの事例で一つだけ申し上げておくとすると、スイスも民間事業者の地下活用の動きに合わせて、政府の側で、2022年には法律(スイス地下貨物法)も施行しているので、地下で何か構築物をつくりたいという企業があった場合には申請ができ、スイスの国土形成計画や都市計画に盛り込めるようなプロセスについては法定化されています。一方で、インフラ整備を民間資本だけで賄うための政治的・法的な保証については未整備な状況だと聞いています。
先ほどのスイスの事例でいうと、すでにスイスの民間事業者の動きを受けてスイス政府が国土形成計画にその計画を位置付けているそうです。その後の、州政府の都市計画の中の位置付けについて今調整が行われている段階だと聞いております。
ここまで、海外状況やWISENETのお話をさせていただきましたが、自動物流道路について詳しく説明いたします。 自動物流道路の構築に向けた検討を進めるため、一昨年の2024年2月に検討会を立ち上げました。東京大学大学院教授の羽藤英二先生に委員長を務めていただき、自動物流道路をどのようなコンセプトで進めていくべきかについて議論を行いました。
昨年2025年7月に、自動物流道路のあり方について最終取りまとめをいたしました。本日、その内容を中心にお話をさせていただきます。
自動物流道路とはどのようなものなのか、その定義につきましては、「道路空間に物流専用のスペースを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人化・自動化された輸送手法によって荷物を運ぶ新たな物流システム」としています。
資料右側のイメージを見ていただければと思いますが、高速道路の中央分離帯にカートが通っています。これは別に中央分離帯に限定しているわけではなく、利用可能な場所として中央分離帯や路肩、地下などを活用できないかと考え、今検討を進めています。
政府の対応として、資料下側に記載していますが、昨年のいわゆる「骨太の方針」の中にも盛り込んでいただいており、物流危機の解決に資する自動物流道路については、2027年度までの新東名高速道路建設中区間での実証実験の実施と、2030年代半ばまでの第1期区間での運用開始に向けて、早期に技術的な検証のための実験を実施し運用にかかる必要な制度整備を行う、と閣議決定されています。
我々の当面の動きとしては、2030年代半ばに向けて、東京―大阪間の一部のルートで運用を開始できないかと検討を進めている状況です。
事業のイメージについて、「自動物流道路というのはどこまでがどう自動物流道路なのか」とよく聞かれます。イメージとしてはJR貨物のビジネスモデルが近いと思っています。
高速道路の空間に、自動物流道路本線につながる荷物を受け渡す拠点をつくり、そこに持ってきていただいた荷物を自動物流道路で運び、またその拠点に下ろして、トラックで迎えに来てもらうという事業モデルになっています。そういう意味で、JR貨物様の「駅まで持ってきていただいた荷物を鉄道で運び、また駅にトラックで取りに来てもらう」というイメージと相似しています。
簡単に自動物流道路の最終取りまとめ概略をご説明したのち、そこまでに至った検討の経緯について詳しく説明させていただきます。
自動物流道路については、資料中段の「自動物流道路が有すべき機能」という箇所をご覧ください。東京-大阪間を基本としていくべきだという提言をいただいております。ただ東京-大阪間だけでは輸送のメリットが出にくいといったご意見もあり、関東や東関東、兵庫県あたりまで拡大していくべきだというご提言もいただいているので、こういった広がりも含めて今後の検討ポイントかなと思っております。
そして、東京―大阪間に荷物を出し入れする「拠点」というものを複数設定し、他モードとの連携を考慮すべきだと提言いただいています。他モードとは航空、鉄道、海運のことで、そういう他モードとの連携も意識した場所に自動物流道路のルートや拠点をつくることを検討すべきとご提言いただいております。
次に荷姿、一体どのような姿の物を運ぶのかというところです。先ほど物流全般の課題として標準化が全然進んでいないことを挙げましたが、物流・自動車局で取りまとめている官民物流標準化懇談会で決められている標準仕様パレット(11パレット:1,100mm×1,100mm×144mm)に統一し、そのパレットに乗る荷物だけを運ぶことを想定しています。
また搬送速度は70~80㎞/hを目指すとしていますが、これは必ずしも自動物流道路を通るカートなどが70~80㎞/hであるべきだというよりは、70~80㎞/hで物が走っても大丈夫なインフラをつくるべきなのではないかという観点で書かせていただいております。
これらのサービスを提供するために実証実験を行い、技術的な部分の検証を速やかに実施して、技術開発を促すためのロードマップや協調領域の構築を行うべきだというところを、去年夏までに提言いただいています。
インフラ整備に関しては、右側の「インフラ(本線、拠点)」に記載の通り、まだどこにつくるかは決まっておらず、今はこの「ケーススタディ区間」と呼んでいる4区間について、工期や工事費の検討を様々な仮定をおきながら検討しています。
最終とりまとめに向けた検討内容について詳細に説明させていただきます。自動物流道路について非常によく聞かれるのが、「自動運転トラックが出てくると幹線輸送はどういう役割分担になるのか」という点です。
先ほど我々がターゲットとしているのは11パレットに乗る小型の荷物であると述べました。基本的に、10tトラックであれば11パレットが16枚乗るのですが、自動物流道路では1パレット、2パレットという単位で運ぶことを想定しているので、既存のトラック輸送や自動運転トラックとは、荷物の量や長尺なものなどで差別化、役割分担できるのではないのかと考えます。
先ほども、小口多頻度化で物流件数が激増していると述べましたが、現在の物流の流動量を見ていきたいと思います。青い棒グラフが件数で、オレンジが重量を表しています。流動数の件数では軽工業品、金属機械工業品、雑工業品の順に多く、それだけで7割を占めます。
雑工業品、軽工業品、農水産品の1件当たりの流動ロットは0.5t以下となっておりこのように件数が多く軽量なものをターゲットにしていきたいと考えています。
次に、なぜ東京-大阪間になったのかということなのですが、現在の大型トラックの交通量の現状をまとめた資料から見ていきます。黒の太線が交通量の多さを表しています。断面交通量としては、中部~近畿間が約9万3,000台、関東~中部間が7万6,000台で、関東~中部~近畿間の流動が多いことが分かります。
何を運んでいるのかが表になっています。赤枠で囲っているところが小口の貨物です。軽量で件数が多いもの、取り合わせ品や日用品、食料工業品が該当しますが、足し合わせるとこれだけで約1割から3割ぐらいの貨物量になることが分かります。
残念なことに、各断面で一番多く運ばれているのが「空車」になっています。そういう意味では、こうした空車の走行も、自動物流道路に転換することで合理化できる部分があるのではないかと考えています。
先ほどもインフラの整備について、どこにつくるのかまだ決まってないと申し上げましたが、本線整備にあたっては、地上部につくるにしても地下につくるにしても、それぞれ課題があります。
例えば、地上部の場合で路肩につくったところをイメージしていただきたいのですが、路肩を真っ直ぐ進んだとしても、インターチェンジやジャンクション、SA/PAへのアクセス路に、道の交差が発生してしまいます。そういう場合は上に避けるのか、下に避けるのかという対応が必要になってきます。
そもそも地上部にはいろいろな埋設物、看板、跨道橋などの橋があるので、そういうものを避けるためには、施工上の課題が多くなります。
また地上でつくるときは通行規制を伴うことになるので、施工期間が長期化してしまうのではないか、ということも言われています。
そうであれば地下につくってしまえばいいのかという話なのですが、地上部での工事に比べると工事費がかなり高額になりますし、多量の掘削残土も出てくるのでそのための処理も発生します。
その他に一般的な課題として言われているのが、資料の真ん中の部分ですが、結局自動物流道路の荷物を出し入れする拠点をつくった場合に多数のトラックの交通需要をさばける周辺道路ネットワークがそもそもあるのかないのかというのは、拠点の場所を検討する上で非常に重要な要素だと考えます。
そういう意味で、既存の物流施設などと連携しながら、空間の一部を拠点として使うといった形の連携もあるかと考えています。
先述のケーススタディ区間の試算についてですが、それを下段の地図に示しています。いろいろな代表的な区間を取り、インフラをつくるのにどれくらいの時間やコストがかかるのか、今試算を進めているところです。
これまで道路空間の中の、地上なのか、地下なのかというお話をさせていただきました。そもそも路線として東名と新東名どちらが有利なのかという論点もあり、考慮すべき路線特性をまとめたのが次の図です。
東名は約2割が橋梁、トンネルの構造物であるのに対し、主に山間部を通る新東名は約6割が構造物という状況です。そういう意味では、東名のほうがあまり複雑でない構造でつくれるのではないかと考えられますし、新東名であればそもそも全部トンネルでやってしまえばいいのではないかという意見もあります。
ただ、地下につくる場合、東京-名古屋間の橋梁の基礎杭がかなり長く、40mを超える区間もあるので、そのような深度を踏まえた走行区間をいかにして確保していくのかについては、まだいろいろな課題があると思っております。そういう意味では、どこの路線を通っていくのか、どこにつくるのかについては、まだケーススタディを通じて検討を進めている状況です。
どれぐらいの工費になるのかという計算です。地上部についてはかなり古い数字なので、この数字を今精査しているところなのですが、整備費のイメージの参考にご紹介します。
地上部でつくってしまうとすると、10㎞で254億円、つまり1㎞当たり25億円ぐらいでできるのではないかと想定されています。地下部でつくるとすると、1㎞当たり7億から80億円ぐらいかかるのではないかという、アンケートの結果数値があります。
ただ地上部でつくる場合、随分と安く見えるかもしれないのですが、自動物流道路で簡単なカートで運ぶとすると、災害や風煙の影響などを考えて、道路上に隔壁や覆いを建設しなければならず、その費用も考慮する必要があるので、そのための計算を今別途行っています。
無人の自動運転で運ぶとき、どのような搬送機器が想定されるのかという、機器のご紹介です。皆様もイメージがつくと思いますが、自動運転トラックの場合、かなり大きな空間が必要になるので路肩などのスペースでは足りず、そこの課題はあるかと思います。
その右側の自動配送ロボットは、低速で公道を走れるものですが、やはり速度の向上は必要ですし、乗用車と同等の耐久性しかないため、24時間の走行という観点では、耐久性の向上という課題もあるかと思います。
ご承知かもしれませんが、倉庫の中の自動化は非常に進んでおり、無人で動く機器も多数ある状況です。ただ、運べる重量が小さい、速度がかなり遅い、あるいは外で使えない、耐久性が低いといった課題も多くあります。
自動物流道路を構築するにあたり、今どんな技術があるのかについて、2024年にマーケットサウンディングという形で市場調査をさせていただきました。
搬送手法については、先ほど70~80㎞/hで走れる搬送機器が必要だという話をしましたが、やはり我々が求めるような仕様を満たす機器は未開発状態で、今後技術開発が必要な状況です。
一方、搬送の運行マネジメントについては、運行管理システム、クラウドカメラによるモニタリングはすでに運用段階にあるので、こうしたさまざまな技術の組み合わせで実現が可能なのではないかと考えて検討を進めているところです。
マーケットサウンディングにおいて、搬送機器の技術提案で新しくて興味深いと思ったものがあったのでご紹介させていただきます。スタートアップ企業で、リニアモーターを使って荷物を運ぶ技術を開発している会社です。
床面にパズルマットのような形の四角い囲いが見えますが、これは1枚1枚分割可能で、ドッキングさせて使っているものです。このレール沿いに荷物を載せたカートが縦横無尽に動けるようになっており、倉庫と走路が一体となった搬送機器になっています。
ここまでは、自動物流道路の搬送の話をさせていただきましたが、次に課題となるのは、自動搬送機器およびトラックから自動で荷役する技術です。そういった技術についても、中国製などいろいろあるのですが、自動フォークリフトやデパレタイザー/パレタイザーなど、倉庫における自動化の技術はかなり進展してきています。

自動物流道路について、これまで技術的な部分や施工上の課題などをいろいろ話してきましたが、「そもそもこれは誰がやるのか?」という疑問があると思います。
事業のあり方についてはインフラの持続可能性の観点から、やはり民間資金でやっていくべきではないかという考え方で、民間活力を最大限に活用していくべきだと提言いただいています。従って、公共事業でやってしまうという思想ではなく、きちんとビジネスになっていくよう国としては支援していきたいと思っています。
そういう意味では、事業規制のあり方や構造、安全などの基準についての議論は国で進めていくべきだろうと思っています。
「民間資金を前提とした自動物流道路のビジネスができるか?」というところについて、令和6年にサウンディング型市場調査を実施させていただき、46社から意見提出がありました。建設、運営、維持、保有等様々企業の方々から、それぞれのフェースにおいての意見をいただいており、それぞれの業務フェーズでリスクがあるというご意見でした。
建設面では、建設コストが多額で事業が長期間に及んでしまう。コストが不確実で、大きなインフラ工事をしようとした場合にどのぐらい上振れするのかも分からない。民間ベースの事業では資金が借りにくい――といった意見がありました。
運営面では、物流の波動があるため収益をどう確保するのか、などの課題が挙げられました。
維持面では、このようなインフラをつくった場合の老朽化や大規模修繕時の資金調達、災害などが起こったときの不可抗力的損害にどう対応するのかについて、皆様かなり心配されていることが分かりました。
保有面では、特にそのような巨大インフラを保有することについて、固定資産税や占有料の問題や、既存の道路管理者であるNEXCO様との間の資産調整をどうするのかという課題が出てきています。
自動物流道路の効果について簡単にご説明します。自動物流道路をインフラとして、約7mの穴を掘り、そこに30㎞/h又は80km/hで10m間隔で搬送機器を動かせたと仮定して、どの程度のサービスが提供できるかという試算があります。需要面からではなく供給面からその数字を見積もると、年間約0.7億~2億tの貨物搬送能力を発揮できるのではないかと試算されています。
これは自動物流道路の実際の需要は考慮しておらず、単にインフラとして「この程度のインフラをつくればこのくらい荷物が運べるのではないか」という仮定の数字です。
将来の輸送力について、物流・自動車局が2024年に試算を出していますが、2030年度に34%不足するとされており、それが約9億tに相当します。自動物流道路はその不足分のうち1割~2割をカバーできるインフラとなり得るだろうという試算をしています。
その場合のCO2排出量も、約240万~640万tの削減が可能とされ、約3,000万tを削減しなければならない中、一部ですが貢献できると考えられます。
今後、自動物流道路の整備による経済効果の算出を進めていくとともに、事業採算性についてはケーススタディ区間についての工費や工期の試算、実証実験によってさらに詰めていくべきだとしております。
自動物流道路検討会としては2025年に最終取りまとめをいただいておりますが、同検討会とは別途、官民コンソーシアムを立ち上げて意見交換しています。
コンソーシアムを立ち上げたのは2025年5月。自動物流道路のビジネスモデルをどうつくっていくか、機器の動かし方、インフラのオペレーションをどうするか、インフラをどうつくっていくか、などテーマごとに分科会を設けて話し合います。例えばインフラ分科会ではゼネコン、コンサル、不動産事業者などが多いのですが、そのような形で今議論を進めています。
5月の立ち上げ時は70~80社ぐらいの企業が参加くださっていましたが、現時点では115社ぐらいの方々に入っていただいています。「こんなサービスにしたらよいのでは」「こういう実験をした方がいい」「インフラ、オペレーション側のコストが分からないのでビジネスモデルの検討もできない」といったいろいろな意見をいただきながら議論を進めているところです。

最終取りまとめの中で、今後の検討にあたって留意すべき点をいただいておりますのでご紹介します。
自動物流道路を今後20年、30年後の日本社会を見据えてつくっていく上で、物流システムをどのように支えるのかという観点から考えていく必要があるというご意見をいただいています。
また物流専用空間について、物流だけの使用ではなく、例えば自動物流道路の空間を作ったときに空間に余剰の部分があれば、その空間を電力や通信のためのインフラを収納したり防災のために備蓄したりする機能を持たせるなどして、自動物流道路の空間の利活用も念頭に置いた検討をすべきだという意見もありました。
さらに、他モードとしっかり連携していくことも重要だと言われていますが、一方で自動物流道路を、トラックや鉄道など他モードの貨物輸送との競争を不当に歪めないような事業環境で構築していくべきだという意見もいだいています。
また、先ほど11パレットを使っての輸送を基本とすると申し上げましたが、そうした統一的な規格を使うことで、自動物流道路をきっかけに荷主様や物流事業者様が商慣行の変容を促してロジスティクス改革を起こすべく検討を進めるべきだという提言をいただいております。
具体的には、自動物流道路を11パレットしか使えないインフラにすることで、業界で11パレットの使用が広がり、標準化が進むきっかけになればということです。
今取り組んでいる実証実験についてお話しさせていただきます。今年度は、そもそも自動で輸送したり自動で荷役したりすることが今の技術で完結できるのか、について実験を行っています。従って、今ある技術や既存の施設を使って自動物流道路の実証実験をしています。
ケースを6シーンに分けております。①自動で荷を下ろす。②自動で搬送する。③荷物が落ちているなど異常があったときにそれを回避する。④自動運転はGPSを使いながら位置補正するのが前提だが、電波のないトンネル区間でいかに自動搬送できるのか。⑤搬送機器の運行管理。⑥ETC2.0などと組み合わせて、車両の到着情報を道路側システムから拾い、自動走行の搬送機器の方に飛ばしてトラックの到着に合わせて自動で荷物を出す。
以上のようなシーンが再現できるかという実験を行っています。
2025年9月に9グループ12ケースを採択しました。各ケースの右肩に企業名を記しておりますが、多種多様な企業に参加していただいています。例えば野村不動産様、IHI様、豊田自動織機様、他にもゼネコン各社がいろいろな企業と組んで出していただいているものもあります。成田国際空港会社様と千葉県様、先ほど紹介したスタートアップのCuebus様、鹿島建設様、前田建設様ほか、多数の企業が今参加されています。
成田空港近くの、千葉県が保有するトンネルの中で実施した自動物流道路の実証実験についてご紹介します。。自動搬送の実験と併せて、電波環境が悪いトンネル内で与えられた目標位置を走行できるかという実験を実施しました。
実験者から聞くところによると、実験は供用しているトンネルの一部未供用区間の中で行っているのですが、機器が走行する隣の車線はもう供用されている部分なので、トラックも含めいろいろな車が走っています。この機器自体は、マップを事前につくって、そのマップの中で自分の位置を確認しながら走る機器です。大型トラックが横を通ると、マッピングに多少乱れが生じて自己位置の補正に手間取ることもあった、といった話も聞いておりますが、基本的にはきちんと目標軌道に合わせて走行できることが確認できました。
また、成田空港の敷地内で、リニアモーターで動く搬送機器を敷設し実験を行いました。
地面に設置されたレールに磁石が付設してあり、搬送台車自体にも磁石が載っており、それぞれの磁石の反発力を利用しながら前進するリニアモーター機器になっています。写真では約600㎏の荷物を運んでいますが、約10㎞/hで運搬可能であるという実績が得られました。
最後に、今後自動物流道路をどのように進めていくのかについてお話しします。先ほど2030年代半ばまでの運用開始を目標とし、それに向けてコンソーシアムでの議論を中心に検討を進めていると述べました。
次のステップはこちらの資料に示した通りです。現在はコンセプト実証フェーズで、今回の主な実験は国土交通省が所有する国土技術総合研究所のトンネル、既存の施設や先ほどご紹介した成田空港の施設、未供用の道路で実証実験を行っています。
2026年度に予定しているのが、他のモードに載せ替えることを前提とした交通シミュレーションで、拠点をつくった場合の周辺道路の影響や、高速道路の交通状況への影響を確認していく実験を進めたいと考えています。
さらに、2027年度までに新東名の建設中区間の中でも実験を実施したいと思っています。今の実験と新東名での実験の違いをよく聞かれます。今の実験は完全に平坦な空間で行っているのですが、新東名の高速道路はかなりの勾配があり、結構長い区間も取れるので、そのような場所で自動搬送が可能かどうかの実験をやっていきたいと考えています。
その後の2028年度以降は技術開発・実装フェーズです。公道上を走るにあたっての課題などを検証した上でどのような機器がよいのか検討して開発を促します。2030年代半ばに向けて、インフラ整備や搬送機器の製造に取り組んでいきたいと考えております。
今、倉庫の機器は一部国際標準化の議論が進んでいるという話も聞いていますし、中速・中型で公道走行する機器にハンバーガーを載せて、少し先まで運ぶような実験をされていると聞いておりますが、そういうものについても標準化の議論が進んでいます。
自動物流道路をせっかくつくるのであれば、海外展開を見据えて、システムとして国際標準化の議論も必要だと思っています。
併せてご紹介しますが、最終取りまとめのタイミングとほとんど同じタイミングで成田空港のエリアデザインセンターから、成田空港でも空港施設を起点とする自動物流道路の整備をすべきではないかと、エアポートシティ構想の提言もいただいております。
自動物流道路は基本的に、東京-大阪間の幹線輸送の人手不足の代替というところを念頭に置いているのですが、他にも早期に効果が発現されるような区間については実現可能性があると考えられるので、そのような検討も進めていきたいと思っています。
JR貨物も、2025年度事業計画の施策として、「自動物流道路の連携検討の深度化」という記述を入れておられますので、他モードとも引き続き連携しながら、自動物流道路の検討を進めていきたいと思っております。
ご清聴ありがとうございました。