-関西空港調査会主催 定例会等における講演抄録-
坂田 誠 氏
財務省大阪税関 関西空港税関 支署長
●と き 2026年4月22日(火)
●ところ オンライン会場

関西空港税関支署の坂田です。本日は、関空における小口輸入貨物の急増について説明します。
本日の説明事項は大きく3項目です。まずは税関の機構及び税関の業務内容、その後に航空貨物の現状、そして小口輸入貨物の対応という順で説明します。
まずは税関の機構ということで、財務省の機構図を示します。左側に並んでいるのが財務省の本省の機構であり、この中で「関税局」が税関行政に関わっている部署となっています。「税関」は財務省の地方支分部局で、全部で9つあります。
税関行政において、関税局が企画立案、税関が税関業務の執行を担っています。
次に9税関の位置関係を示します。開港当初の港を基準に税関名と管轄が決められています。
税関の管轄区域は他の行政機関と異なる部分が多く見られます。例えば、北では函館税関が北東北までを管轄しており、南では九州が門司税関と長崎税関に分かれていますが、このような区分は、税関独自のものと言えます。
成田空港の管轄について補足しておきます。成田空港は千葉県にあり、地図上では横浜税関に入りますが、成田空港だけは飛び地として東京税関の管轄となっています。
次に、大阪税関の機構図と管轄を紹介します。北陸の富山・石川・福井が、東海・中部を管轄する名古屋税関ではなく、大阪税関の管轄に含まれている点が特徴の一つです。
機構図に戻りまして、税関関係と主要空港の支署を示します。この税関の縦の並びは建制順です。大阪税関は建制順では4番目です。もともと港を中心に発展してきた経緯から、横浜税関や神戸税関の方が建制順では上になっています。
職員数でみると、大阪税関は東京税関に次いで2番目です。支署ベースで見ても関空税関支署は成田税関支署に次いで2番目となっています。
税関の3つの使命についてお話します。税関には3つの使命がありますが、この3つを端的に言うと「迅速・適正」通関になります。「迅速・適正」を両立させることが重要です。税関はもちろん、密輸阻止という使命・命題がありますが、一方で物流を止めないよう円滑に流すことを考えねばなりません。このバランスをいかに図っていくのかが課題になります。
税関の取締りの対象について説明します。税関がそもそも何を取り締まっているのか、ですが、まずは国際貨物の形態、つまりどんな形で貨物等が入ってくるのかを、イメージ図で示します。
航空では、旅客の手荷物、航空貨物、そして国際郵便物も入ってきます。一方で海上では、クルーズ船旅客もありますが、メインはやはり海上貨物となっています。当然ですが、これら全てが税関の取締りの対象になります。
このように、取締り対象が多岐に渡っていることもあり、税関内では所管管轄が分かれています。航空機旅客の手荷物と航空貨物は関空税関支署が所管、国際郵便物は大阪外郵出張所が所管しています。海上では、各港に官署が設置されており、それぞれが各港の取締りを行っています。
関空税関支署の業務を整理すると、「取締り対象である航空機旅客等と航空貨物について迅速・適正な通関を行うこと」となります。
この章の最後として、関空における摘発事例を示します。まず旅客ですが、左から順に大麻約31㎏、覚醒剤約1㎏、そして一番右の金約3㎏の摘発事例となります。金については、カートに巧妙に隠して密輸が企てられた事案となっています。
貨物では、金160㎏といったかなり大口の事案や、玩具拳銃なども摘発されています。
これらはあくまで一例であり、小口の摘発も含めるとほぼ毎日のように摘発がある状況です。密輸品は絶対に止めなければならない、それが税関の使命であり、日々、現場職員は頑張っています。
一方で、旅客及び輸入者のほとんどは善良な方々であり、密輸を企てようなどとは思っていません。そのような方々の貨物まで長く留め置くわけにいかないので、迅速と適正のバランスが重要になってくるわけです。
関空税関支署の業務は旅客と貨物の取締りですが、本日は貨物の話のみとさせていただきます。
航空貨物の現状についてですが、データを見ていく前に、まず航空貨物の単位について説明しておきます。貨物の単位は大きく3つあります。ここでは輸入を見ていきますが、輸入の単位として「輸入額」「輸入数量」「輸入申告件数」があります。
このうち輸入額と輸入数量は馴染みがあると思います。財務省からも貿易統計が公表されており、貿易統計から詳細なデータを取ることができます。民間の方々もやはり輸入額と輸入数量がもっぱらの関心事項ではないかと思います。
輸入申告件数については、詳細なデータが公表されていません。例えば関空税関支署の輸入申告件数の具体的な数値は公表されていない状況です。
そもそも輸入申告とは何かという話もしておきたいと思います。輸入申告をネットで検索すると、「輸入申告とは、貨物を外国から輸入する際、その許可を受けるために税関に対して行う申告」と出てきます。つまり税関に向けた申告ということになります。
輸入申告件数の数え方を簡単なイメージ図で説明します。航空貨物で衣類1,000点を輸入する場合の申告件数の数え方を見ていきますが、これを商社が輸入するとなると、一つの契約で事足りるので1申告での対応が基本となります。一方、最近では、通販で海外から直接購入する個人の方々が増えています。Eコマースと呼ばれているものですが、この場合は各個人が輸入者になるので個人の数だけ申告があることになります。
これをまとめたのがこちらの図です。同じ貨物ですが、商社が輸入すると1申告、個人輸入では1,000申告になります。
税関では、申告書を見て輸入の審査を行うので、輸入申告件数が1,000倍になった場合、確認すべき申告数は確段に増えることになります。
貨物の小口化(通販等)によって、輸入申告件数が急増しています。これが税関の業務量に直結するため、我々税関にとって小口貨物急増は重要な課題となっています。
ここからは小口貨物の動向について説明します。まず、航空貨物データとして輸入許可件数の推移を示しました。ここで「輸入許可」という言葉を使っていますが、これは計上しているのが許可時であることによるものです。輸入申告と輸入許可は、件数自体は同義と考えていただいて結構です。
左が全国分、右が大阪税関分です。全国と大阪税関、共に右肩上がりで件数が増加していることが理解いただけると思います。
大阪税関の輸入許可件数は令和6年で全国の47%を占めており、実はそのほとんどが関空分となっています。
関空の輸入許可件数はこの6年間で7倍と、急激に増加しています。この伸びの大きさは全国の伸びよりも大きくなっています。すなわち年々関空の小口貨物の割合が増え、小口貨物が関空に集中してきている状況にあります。
貨物取扱量と輸入貿易額は、どちらも横ばい程度で、輸入申告件数の動きとは全く異なっています。重量と金額は増えずに、件数だけが貨物の小口化によって増えている状況となっています。
なぜ、関空でこれほど小口貨物が多いのかと疑問を抱かれる方もいると思います。理由はいろいろと考えられますが、理由の一つとして挙げられるのが、関空の中国旅客便の多さになります。
参考として、3大空港――関空、成田、羽田の国籍別の入国者の割合を示します。
関空は羽田、成田と比べて中国の割合が高いことが分かります。中国人旅客が多いので関空には中国便が多数就航します。中国旅客便にはベリーの部分に中国からの通販貨物がたくさん積み込まれてきます。それが関空の小口貨物が増加している理由の一つかと思います。
参考までにベリーについて示します。ベリーとは、旅客が乗っているスペースの下の部分です。小口貨物であればベリーの部分に大量に積んでくることができるので、中国便のベリーには小口貨物が大量に積まれてきているのが現状です。
もちろん中国便が多いことだけが、関空の小口貨物が多い理由ではないと思います。小口貨物については関空を中心とした販売ルートができていると言われており、特に中華系の業者のルートができているため、そのルートに乗せて中国来の小口貨物が増えていったという理由などもあると思います。
小口輸入貨物への対応について説明します。 まずは小口輸入貨物の流れを見ておきます。これも簡単なイメージで説明します。
左から右に貨物の流れを示しています。航空貨物を積んだ航空機が到着して、まず航空貨物上屋(1次上屋)に貨物が搬入されます。ここではマスター単位となります。
その後、通関蔵置場(2次上屋)に運ばれ、そこでマスターからハウス単位に仕分けされます。その後、税関に申告し、許可後に配送されるという流れになります。
この流れの中で、特に上流の1次上屋(航空貨物上屋)で貨物が滞留してしまうと影響が非常に大きくなります。実際、クリスマスシーズンあるいは年末年始などで小口貨物の取り扱いが急増し、貨物が滞留してしまったことがあります。
小口貨物は年々増加していますが、そういった中、より一層円滑な物流を図っていく必要があります。
貨物の単位について説明しておきます。「マスター」とは「マスターエアウェイビル」、「ハウス」は「ハウスエアウェイビル」のことです。小口貨物はハウスが申告の単位となります。
通販貨物の場合、通常、1マスターの中にハウスが100~1,000個超、入っています。
次に、物流の中で税関検査がどのように関わってくるのかを説明します。
申告された貨物のうち、税関で検査が必要と判断された貨物については「検査指定」を行います。検査指定はハウス単位で行い、税関検査場に運ばれ、X線等の検査を行います。そして特に問題がなければ、元の通関蔵置場に戻されて、各輸入者に配送されるという流れになっています。
これはあくまでも一通関蔵置場の流れですが、いろいろな通関蔵置場から数多くの検査貨物が、税関検査場という一つの場所に集められています。
小口貨物の急増により、当然検査件数も増加しています。一方で税関検査場のスペースは限られているので、検査場の逼迫という問題が発生している状況にあります。
以上、簡単に小口貨物の流れを見てきましたが、小口貨物が急増している中、いろいろな課題が出てきています。
民間側では、貨物上屋がほぼ満床、貨物上屋の処理能力が逼迫、といった課題があります。貨物があふれて物流に支障をきたすことも時折起こっています。
税関においても、税関の処理能力の逼迫が課題となっています。これは件数が増えたことにより、検査の業務量が増えたこと、前述のように税関検査場のスペースが逼迫していること、また検査装置の容量も限界にきているという課題があります。
今後もEコマースによる通販貨物が増えていくことが見込まれていますので、これらの課題への対応が急務となっています。
このように、官民共に小口貨物急増に対して課題を抱えているのが現状ですが、小口貨物の急増自体は決して悪いことではないと考えます。貨物件数が増えることは、それだけ関空が利用されているということであり、関空全体の発展につながります。関空がより多く使われること、それ自体は歓迎すべきことだと思います。我々税関としても、関空が発展していくためにできる限り協力していきたいと考えています。
ただ、現状においては必ずしも効率的な審査・検査ができていない部分がありますので、これをどのように効率化して「迅速・適正通関」につなげていくのかが、税関側の課題と考えます。効率的で円滑な物流にしていくことは、官民共に目指す方向ですので、そこに向けて官民で協力していくことができればと思います。
こちらが本日の最後の資料です。この資料は関西エアポート様が公表しているものの抜粋です。関空では2025年12月、国際貨物地区改修プロジェクト「Cargo Next」を立ち上げ、今後に向けた検討が開始されたところです。この検討の中で小口貨物急増への対応についても検討していきたいと考えています。
小口貨物急増への対応の方向性として、物流施設の大型化、あるいは集約化があると思っています。今後の関空の発展に向けて、官民でWin-Winとなるような体制の整備を実現するための議論を、共に協力し合って進めていきたいと考えています。関係者の方々には今後ともよろしくお願いします。
私からの説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。